自分だけの部屋の外

ほぼ自室にいる

広島旅行2023 (1) ひろしま世界遺産航路

春先に大河ドラマ平清盛』を観た。今年のテーマは「現代語訳でいいから『平家物語』を読む」なので、○盛だらけの平家一門の区別がつけられるように。結局忠盛を「パパ盛」と呼び、頼盛を「弟盛」と呼んで全50話が終わってしまったが、夏休みの旅も十数年ぶりの宮島再訪に決めたのだった。

前日は楽しみ過ぎて4時間半しか眠れなかった。ふだん8時過ぎまで眠っている人間が7時前に家を出ないと新幹線に間に合わないので数日前から早寝早起きを進めていたが、悪あがきだった。新大阪を過ぎるまでうとうと眠っていたので、広島までの4時間弱は短かった。静岡では完全に眠っていたので富士山が見えたのかどうかもわからない。

ふつうに宮島口まで電車で行ってフェリーに乗り換えると10分しか海上にいられないので、ひろしま世界遺産航路という船便を予約してみた。平和公園から宮島へ直接行けるし、45分も水上にいられる。どの街に行っても観光クルーズをやりたい者としては乗らないわけにはいかない。周回コースが多いクルーズ船で、実際にその日の目的地に着けるというのもポイントが高かった。

路面電車平和公園に着くと、船乗り場へ行く途中に原爆ドームがある。ゆがんだ鉄骨が補強されている。教科書や新聞に載っている写真から想像していたより、やっとのことで建っている、はかない建物だった。

原爆ドームはもともと県立のコンベンション・センターだったそうだ。戦前は賑々しい施設だったものが、世界規模の戒めの記念碑になっている。広島の人たちは原爆ドームを目にするたびに1945年8月6日に引き戻されるだろうに、これを残しておこうと決めたのはたいへんな決断だったろうと思う。

原爆ドーム

だれも大声で話さない、静かな場所だった

ドームを見ながら川沿いを歩くとすぐに船着き場に着く。

ひろしま世界遺産航路乗船場

ひろしま世界遺産航路の船。平日だからか空いていてのんびりしている

程よい乗客数で、窓側にゆうゆう座れた。遊覧船ではないので余計な観光案内がないのがよい。川を進む間は基本的にデッキに出られることになっているが、この日は水が少ないから船内にいてくださいとアナウンスがあった。船から落ちたときにけがをする可能性があるかどうかが分かれ目らしい。

海に出ると航行速度が上がり、ときおり船底が海面に「バン!」と叩きつけられる。けっこう大きな音がする。折れないものだなと思う。窓の外は雨で灰色の濃淡が続いたが、一瞬だけクールベの絵のようだった。

宮島へ向かう高速船の窓からの眺め

雨雲の下から抜け出た頃

次回へ続く